2020年5月の記事

パチンコ屋の営業自粛強要問題

2020年5月1日

店「まるで魔女狩りだ」客「よほどスーパーの方が危ない」福岡県が休業拒否のパチンコ店名公表

パチンコ屋の自粛要請問題には本当に色々考えさせられる。そもそも緊急事態において危険性の高い行為を禁止することに対して,罰則を設けられない現実には危機管理上問題を感じる。

しかし,そもそもパチンコ屋の危険が特に高いわけでもない。

もしパチンコ屋が感染拡大の脅威となることがほぼ確実だというのであれば,これは法的根拠を整備した上で強制的に営業禁止できるべきで,自粛要請でお茶を濁すというのは,中途半端で政権側の責任逃れにも感じる。現状はそのような強制力に乏しい規定に留まっていて,そうでありながら結局は同調圧力による営業自粛の強要になってしまっている。

ちなみに営業を禁止するとしたら,それに対する補償金を出すことは必ず必要とまでは言えないと思う。開店すれば客が来て儲かる業種なのだから,営業を禁止するのだから補償をしないとならないとなると,「社会に脅威を与えて自分は儲かる」ことに対して金銭を補償しなければならないという話になり,脅しに屈して金を出す意味合いを含むことになる。

ところが,最初に指摘したとおり,パチンコ屋は客同士が対面で話をするものではなく,換気さえできれば密閉,密接にはあたらず,少なくとも飲食店よりはずっとリスクが低い。実際,クラスターが発生したという報告もない。これを営業するなというのは,不要不急の外出を徹底的に禁止させるという意図からならばわからなくもないが,同じく不要不急である外食行為,特に居酒屋が(時間限定ながら)自粛要請されていないことと全く整合性が取れない。パチンコ屋営業自粛という,感染予防上意義の薄い自粛を為政者が鬼の形相で迫るのを見ると,緊急事態に罰則のある営業禁止の権力を為政者に与えることは危険だという話にも一理あるとは思う。為政者だけでなく大衆の中にも,パチンコ屋の営業はクラスターになるものだと強引な解釈して営業自粛を迫ったり,あわよくばギャンブル場たるパチンコ屋に打撃を与えようと躍起になる人が多々いるのも怖い。パチンコ屋がギャンブルであることの問題は新型コロナと関係ない話であって,それは平時にじっくりやるべきことである。緊急時に行う必要性がない。それどころか,今は経済もピンチなのであって,むしろ雇用を守りカネを回す歯車と認識して,ギャンブル嫌いであっても目を瞑るべきだと思う。

2020年5月6日以降も緊急事態宣言を延長する話になっており,それはそれで意味があるように思うが,パチンコを含めて,リスクの低い(クラスター形成の可能性の薄い)活動に対する制限は見直したほうが良いと思う。

余談だが,パチンコ屋の営業自粛が始まってから,インターネットで買える競馬の売り上げが伸びている。競馬の売り上げは国庫や地方自治体に入るけれども,すぐに動くカネではないので,むしろパチンコ屋にそのまま流れていたほうが良かっただろう。

ところで一つ気持ちが悪いのは,権力による営業禁止はするべきでないと考える人の中に,同調圧力も良くないと考える人が多くいるように見えること。現在日本で感染拡大がかなり抑えられているのは,日本人の同調力によるところが大きいと考えてるが,「強制」も「同調圧力」もダメというのは耳障りの良い理想像を追い求めているだけの,無責任な意見だと思う。この先感染はそれなりに制圧できると予想しているが,そうなった場合の原動力は「強制」を代替する「同調力」さらには「同調圧力」なのであって,強制がなかったから良かった,と直ちに褒められるものではないし,むしろ少なくともどちらか一方は必要なものなのだという認識が広まったほうが,現実の社会勉強になるだろうと思う。

備忘録
江川紹子の考察【新型コロナ対策「店名公表」】をめぐる懸念…強権主義の誘惑には抗いたい
【緊急寄稿】新型コロナ問題でパチンコホールがいわれなき批判を受けないために/オオキ建築事務所代表・大木啓幹

このエントリーをはてなブックマークに追加