令和4年3月11日: 東日本大震災トリアージ訴訟を掲載
今日は一宮西身体拘束訴訟上告審
2009年11月24日
先月の報道通りであれば,今日,最高裁で弁論が開かれます。
一宮西病院身体拘束訴訟(平成20年(受)第2029号、最高裁第三小法廷、担当 増森調査官)
患者拘束「違法」見直しか 愛知の病院敗訴に最高裁
2009年10月21日 提供:共同通信社
愛知県一宮市の一宮西病院に入院していた80歳の女性がベッドに体を不当に拘束され苦痛を受けたとして、病院を経営する医療法人「杏嶺会(きょうりょうかい)」に損害賠償を求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(近藤崇晴(こんどう・たかはる)裁判長)は20日、弁論を来月24日に開くことを決めた。
二審の結論変更に必要な弁論が開かれることから、違法な拘束があったと認め、70万円の支払いを命じた名古屋高裁判決が見直される可能性が出てきた。
二審判決によると、女性は腰痛などで入院中だった2003年11月16日未明、何度もベッドを離れて車いすで移動したことから、ひも付きの手袋でベッドに数時間拘束された。女性は一審判決前に死亡、訴訟は遺族が継承した。
一審名古屋地裁一宮支部は請求を棄却したが、二審は「拘束しなければ重大なけがをするという切迫した危険性があったとは認められない」として、拘束は違法と判断した。
関心があって以前に裁判所で記録を閲覧したことがあります。
その結果ですが、まずなにより弁護士(代理人)が壮観です。
一審 平成16年(ワ)第392号(名古屋地裁一宮支部)
原告代理人:六川 詔勝、復代理人:坂井田 吉史
被告代理人:中村 勝己、後藤 昭樹、太田 博之、立岡 亘、服部 千鶴、吉野 彩子、太田 成
結果:請求棄却
控訴審 平成18年(ネ)第872号(名古屋高裁)
控訴人代理人:副島 洋明、中谷 雄二、森 弘典、熊田 均、名島 聰郎、船橋 民江、中村 正典、山田 克己、大石 剛一郎、登坂 真人、相川裕、舟木 浩、石川 智太郎、田原 裕之、山根 尚浩、井口 浩治、水谷 博昭、矢野 和雄、澤 健二、太田 寛、岩城 正光、森田 辰彦、松本篤周、花田 啓一、田巻 紘子、川口 創、稲森 幸一、魚住 昭三、荒尾 直志
被控訴人代理人:一審に同じ
結果:被控訴人は控訴人に70万円+遅延損害金を支払え
中村勝己弁護士は医療側で頑張っている方のようですし、また副島洋明弁護士は身体拘束などで頑張っている方のようです。なにやら代理戦争のように見えてしまいました。何しろ高裁の認容額は70万円ですから、手間ひまかけるより終結させるほうが安上がりでしょうから。
で、上告申立ては病院側からだけなされているのですが、上告趣意書は42ページにわたる長文でした。ざっと読んでなるほどと思わせられたのですが、鳥頭なもので漠然としか覚えていません。過失認定を後方視的に判断しているとか、高裁が求める対応だけが合法で他を違法とくくってしまっているとか、医療の過失認定は事件当時の状況に基づいて判断すべきだとか、当たり前のことばかり書いてあった印象です。参考に、「元検弁護士のつぶやき」というブログに以前に書き込まれたものの,訴訟にかかわる内容で匿名で責任の所在が不明なものは頂けないという趣旨で管理人さんに削除された書き込みを紹介します。上告申立て趣意書には、以下の内容が含まれていました。
No.30 担当弁護士 さん | 2008年9月16日 23:47 | 返信 (Top)
議論が一人歩きしてしまうのを怖れて投稿します。
問題となっている事件の病院側担当弁護士です。
まず,41人の入院患者がいたと主張していたのに,27人の入院患者しかいなかったという報道は,本来は誤りです。41病床を3人の夜勤看護師で担当していたという主張で す。現実の入院患者数は27人でした。ただ,私は,看護師の負担が27/41に減るとは考えていません。4人部屋に2人しか入院していなかったとしても,看護師の訪室や声 掛け,パトロール等の現実の看護師の負担は2/4以上のものであると考えています。そのため,裁判では,病床数を基準に看護師の負担を考えるべきであると主張してきました 。
本件は,平成15年11月の事件です。厚生労働省の介護保険施設向けの抑制廃止の宣言が出されたのも同年ですが,当時,急性期の医療機関で,抑制マニュアルを作成していた 医療機関はどの程度の頻度で存在していたのでしょう。
家族との信頼関係の欠如を指摘する見解もありますが,まさに,突発的ともいうべき状況で起こったせん妄であり,事前の同意書は取り付けてありませんでした。急性期の医療機 関で平成15年当時に,そのような同意書を取り付けるのが通常だったのでしょうか。
無論,事前に同意書を貰っていたとしても,無制約な抑制が許されるはずもありませんが。
新聞では報道されていませんが,具体的な患者の行動は以下のとおりです。
リーゼ服用下で,夜間せん妄になり,患者はナースコールを頻回に行うのみならず,腰椎圧迫骨折で,昼間は疼痛もあって活動性が低く歩行障害もあるのに,せん妄状況で,車い すを「足で漕ぎながら」何度もナースステーションまで来ていました。
尿意を訴えていましたので,患者を納得させるため,オムツが濡れていない場合が殆どでしたが,すべてオムツ交換に応じていました。
消灯後のナースコールで何度も看護師が訪室したり,詰め所まで来た患者を連れ戻すために病室に出入りするため,同室者から苦情が出る状況でした。やむなく,詰め所で寝ても らおうとベッドごと詰め所に移動しましたが,リーゼの効果もあって半覚醒の状況にあり,詰め所のように,明るく,ナースコールでうるさい場所では入眠の妨げになると考え, 丁度,空いていた詰め所前の個室に収容しました。そこでお茶を飲ませたりしてなだめようとしましたが,せん妄が益々ひどくなり,ベッドから起きあがろうとする挙動を繰返し たため,やむなくミトンで抑制したものです。入眠を確認して,直ちにミトンを外していますので,実質の抑制時間は最大でも2時間です。
判決では,せん妄患者に,看護師が付き添って入眠するまでなだめるべきであったとされました。それをしていないから違法であるという論理です。せん妄患者に付き添っていれ ば,せん妄症状は緩解するのでしょうか。あるいは入眠するのでしょうか。せん妄状態にある患者の看護については,ケースバイケースであり,これをすれば良いという一義的な 答はないと考えています。
また,夜間に3名の看護師による当直体制で,本当に看護師1人が入眠するまで付き添うことが可能なのでしょうか。付き添わなかったことが違法と評価されてしまうのでしょう か。
この件については,精神科の専門医に,「せん妄」の病態論とともに,せん妄患者に対して,どのように対応すべきであったのか,という点と,看護学の専門家に,急性期病棟の 看護師が,せん妄患者に遭遇した場合に,看護師として何を考え,どのように対応するのが望ましいのかという意見をいただいた上で,急性期病棟におけるせん妄患者に対する対 応を考えていきたいと思います。
多分に感情的なコメントが含まれているかもしれませんが,ご容赦下さい。