令和4年3月11日: 東日本大震災トリアージ訴訟を掲載
他動詞とは? I love you. は「私はあなたを愛してます」か?
例文2 I love you.(私はあなたを愛してます)
こんな例文は実はいまさら誰も気にとめないのかもしれない。しかしこの例文を言いながらネイティブが何を考えているのかを考えるのは、ちょっと大袈裟に言えば英語の根本を理解するかしないかの瀬戸際といえそうである。もし英語のネイティブが日本語のネイティブと全く同じことを考えながら英語を話しているのであれば、我々は英語を学ぶのにこんなに苦労をしなくてもいいはずだからである。ここでなにを考えるかというと、一つは語順の大原則のことを、もう一つは主語などのことである。
1−1−1 語順について
まず語順について考えよう。もちろん皆さんは日本語と英語の語順が違うということはよく知っているだろう。しかしネイティブが何を考えてこのような不思議な順番でモノを言っているのか、言う気になるのかを考えたことがあるであろうか?ここではそれを考えてみよう。
まず,敵を知るにはまず自分を知れの精神で,英語のことを考える前にまず日本語のことを少し考えてみよう。日本語の文の構造の基本は、いわば伝票方式とでも言えるものである。そこでは登場人物をはじめとして必要な場面設定はあらかじめ先に並べておき(注文品を全て先にならべておいて)、最後に動詞を持ってきて登場人物の関係を一気に言い切る(精算する)方法である。つまり、次のようなイメージである。
私は (する人)
あなたを (される人)
愛してます。
このように先に登場人物を全て明らかにしておいて、最後に「愛してます」という動詞で登場人物の関係をはっきりさせるのである。
ところが英語の文の構造はこれとは全く何の関係もない、いわば橋渡し方式とでも呼べるものである。例文2の "I love you." で言えば、橋にあたるのが動詞のloveなのであるが、橋であるからにはその両端には橋げたが必要であり、それがここでは I と you なのである。
つまり図に直せば次のようになるのである。
このように英語の基本は,あたかも二本の橋げた(何かをする人とされる人)を橋でつなぐような構造になっていて、それを左端から順番に言っていっているだけなのである。このように日本語とは根本原理が全く違うのであるから、英語を学ぼうとするならまず日本語の伝票方式の思考回路をできるだけ回さないようにしなければならないのである。
では日本語の伝票方式を捨てて英語の橋げた方式を受け入れるには何を考えればいいのだろうか?ここでその答えの一つとして次の練習を用意したので試してみよう。"I love you."で練習してもよいのだが、せっかくだから"respect"という単語を一つ覚えよう。"respect"とは「尊敬します」といったような意味の動詞である。そして準備としてあなたが尊敬する人を一人思い浮かべてもらう。さあ、ここまでいいだろうか?準備ができたらいざやってみよう。
まず、"I"、すなわち自分を頭の中でイメージする。自分のからだと脳全体がIである。次にその自分、つまり"I"から"respect"という意味の橋を伸ばす。そしてその橋のもう一方の端に君が思い浮かべた尊敬する人を持ってくるのである。すなわち図で表わせば次のようになる。
どうだろう? 今はぎこちなくても,このぐらいなら日本語を考えなくてもこの順番にものを考えることだって遠からず不可能でなくなるはずである。重要なことは、これがネイティブの考える順番なのだからこれをまねる気にならなくては英語力の進化はない、ということである。
1−1−2 主語・動詞などについて
さて、それでは次に主語・動詞などについて考えよう。
先ほど、英語の構造は橋渡し方式だといった。そして二本の橋げたのうち、先に言うのは主語の橋げたである(主語が何であるか諸君はわかっているであろうか?とりあえずは日本語で言えば「何々は」とか「何々が」だと思っておけばよかろう)。そして橋にあたる動詞を言ったあと、最後に来るものを直接目的語といい、その表面上の意味は,日本語に例えれば「何々を」と似たようなものである。こういうと、「え?でも直接目的語は日本語の『何々を』と同じとは限らないって習ったけど?」という人がいるであろう。それは確かに間違いではないのだが、あまりいい説明ではない。その真相は次章で説明するので、とりあえずは、
「橋の末端は『何々を』にあたる」
と考えればよい。
そんなことより重要なのは,「を」とか「が」「は」の考え方である。ものの本によっては直訳と称して
I | love | you. |
---|---|---|
私は | 愛してます | あなたを |
などと書いてあったりするが、これは大変よくない書き方である。上のように書くと、"love"の後で文が一旦とぎれているような印象を持ったり、"you"の後ろにあたかも見えない「を」があるような気になる危険があるからである。しかしここまでをよく考えながら読んできた人ならわかるであろうが、橋渡し構造の3つの要素はお互いにがっちり連結していて、途中で切れることはないのである。特に、"love"を言ったらその瞬間にもう一本の橋げたを言わなければならない!でないと橋が完成しない!という気になることが重要なのである。