個数の処理と確率の計算における,場合の数の数え方の違い


 あるくじ引きで,1本の大当たりくじと2本の小当たりくじ,そして7本のはずれくじがあるとしよう。このくじ引きを1本ひいて当たる確率を,

 を信じて次のように計算してもいいだろうか?

全ての場合の数 … 大当たり・小当たり・はずれの3通り。

当たりの場合の数… 大当たり・小当たりの2通り。

よって   …(×)

 もちろんこれは間違いで,本当の答は である。大当たり,小当たりを合わせて当たりは3本,それに対してはずれは7本だからである。しかしくじを1本ひいたときの出かたは確かに3通りであるし,当たりは確かに2通りである。本数の違いで説明したいかも知れない。しかし「個数の処理」の計算では,確かに同じものは区別しないで計算したはずではないか。このギャップをどうやって説明しようか?

 そこで確率の神様に登場してもらう。人間には同じものに見えるはずの小当たり2本も,はずれくじ7本も,確率の神様ならなんでもお見通しで,ちゃんと区別していて別々に数えているはずだ。今,大当たりを◎で,小当たりを○で,はずれを×で表すと,

人間が見ると… ◎○○×××××××と見えて,○同士,×同士の区別がつかない

神様が見ると… ◎○12×1 ×2 ×3×4×5×6 ×7と見えて,全てを区別している

というわけである。

 すると確率の神様による場合の数の計算では,○1と○2は添え数字がついているから別物であり,×1〜×7も同様に別物だと考えて,

全ての場合の数 … ◎ ○1 2×1×2×3 ×4×5×6×7 の10通り。

当たりの場合の数… ◎○12 の3通り。

よって   …(○)

と,正しく計算されるわけである。

 このような単純な確率ならば,誰でも無意識に正答できるが,玉の種類が多くなったときなどには,

個数の処理→ 同じに見えるものは同じもの。

確率の計算→ 同じに見えるものでも,個体が違えば別のもの。添え数字をふって考える。

という原則に注意をしてもらいたい。


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